BLOG ブログ
現在の法律では、種別を超えた総合相談の仕組みは存在していません。
介護保険制度下で設置されている地域包括支援センターの業務の一つに「総合相談支援業務」があり、相談の受付時には、世帯の複合的な相談を総合的に受け止めるということがマニュアルには記されています。
しかしこれはあくまで介護保険制度下での範疇なので、継続的に複合的な課題を抱えたケースを支援することは困難です。
そこで、厚生労働省のモデル事業で、「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」が平成28年度からスタートしました。
このモデル事業は「複合化・複雑化した課題に的確に対応するために、各制度ごとに分かれている相談支援機関を総合的にコーディネートするため、相談支援包括化推進員を配置し、チームとして包括的・総合的な相談体制を構築する事業」となっています。
わかりやすく説明すると、種別ごとの単一の機関につながった相談は、たらいまわしにせずまずそこで「丸ごと」受け止めます。
しかし、相談内容が複合的課題を抱えていて単一機関では対応困難であるときには、相談支援包括化推進員につなぎ、多機関連携の支援チームをコーディネートしながら、総合的な支援を行うというものです。
まさに、総合相談支援のゼネラル・コーディネーターいえるのではないでしょうか。
一方で、その役割を誰が担うのかという疑問も出てきます。
個人で担うには重すぎるからです。そんなスーパーマンどこにいるのと言いたくなりますね。
実は、個人で担うというより、チームとして複合的な課題に取り組み、チームで解決するという視点が大切になります。
その進捗管理とスーパーバイズを行う主幹的役割を担うのが相談支援包括化推進員の役割となります。
平成28年度は23の基礎自治体でモデル事業に取り組んでいますが、この制度が仕組みとして根付いてくると、市区町村レベルでの「丸ごと相談」の実現が可能になります。
土屋 幸己(つちや ゆきみ)
公益財団法人さわやか福祉財団 戦略アドバイザー
株式会社アストコ 顧問
知的障害者通所授産施設、知的障害者更生施設、療育等支援事業コーディネーター、富士宮市社会福祉協議会等を経て、2006年4月~2015年9月に富士宮市福祉総合相談課長(兼)地域包括支援センター長として、全国初となる地域包括ケアシステムの構築に携わる。2015年10月より現職。
2017年2月株式会社アストコの顧問に就任し、豊富な経験や専門知識を活かした社内研修を行うなど、障害者支援の人材育成にも関わる。