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前回も触れたように、日本ではこども・障害・高齢・生活困窮というように所管する法律の種別ごとに相談窓口が設けられています。
ご存知の通り行政では頻繁に人事異動があり、専門職ではない職員が相談に応じることが多いため、業務が細分化していたほうが短時間で仕事を覚えやすいというメリットがあるからです。
一方で、細分化には弊害もあります。各法律の範疇のみの相談対応となり、担当領域に該当しないことはできませんという回答になりがちです。
措置の時代の相談窓口はほぼ行政が対応していました。
法律に基づくコンプライアンス重視であり、利用者中心の相談対応ではなく行政主導の相談でありました。
また、相談対象者も年齢や障害状況でそれぞれの相談機関が分かれているため、世帯で複合的な課題を抱えている場合は、相談者のたらいまわしが行われることになります。
例えば、高齢の女性(Aさん)が認知障害になり、介護は娘(Bさん)が行っている。
その娘が介護ストレスでうつ状態になった。それが原因で夫と離婚し生活困窮状態になり、適切な介護ができなくなりネグレクト(虐待)が起きている。
合わせてBさんの長男(C君)は発達障害を持っていた。
その世帯の状況を見かねた民生委員が行政に相談に行くと、Aさんのことは高齢福祉課、Bさんのうつ病は保健センター、生活困窮は生活保護係、C君の発達障害は児童福祉課に相談してくださいと言われ、途方に暮れる。
結局行政は役に立たない・・・・。
当のBさんは自分で相談にも行けず、世帯の状況は改善されないどころか、悪化していく・・・・。
まさに、縦割りスパイラル。
このような状況を改善するために、複合化した課題を含む相談を「丸ごと」受け止める仕組みづくりが急がれるのです。
しかし、現在の法律上では「丸ごと」相談の仕組みは存在していません。
土屋 幸己(つちや ゆきみ)
公益財団法人さわやか福祉財団 戦略アドバイザー
株式会社アストコ 顧問
知的障害者通所授産施設、知的障害者更生施設、療育等支援事業コーディネーター、富士宮市社会福祉協議会等を経て、2006年4月~2015年9月に富士宮市福祉総合相談課長(兼)地域包括支援センター長として、全国初となる地域包括ケアシステムの構築に携わる。2015年10月より現職。
2017年2月株式会社アストコの顧問に就任し、豊富な経験や専門知識を活かした社内研修を行うなど、障害者支援の人材育成にも関わる。